「機械工作安全講習会」実施

1.はじめに
工学研究科という教育・研究を主とする環境において、研究活動の過程で学生・教職員が工作機械を不慣れなまま操作することによる事故防止のため、事前準備として工作機械の加工原理や特性・操作方法等を学習し事故を未然に防ぐことを目的とし、学生及び若手教職員を対象に安全講習会を 1.講演、2.実演、3.実技指導 の3部構成で開催した。
2.機械工作安全講習会講習1(講演)
日 時:2008年5月22日(木)14:40~16:10
場 所:工学研究科 U3棟-211講義室
参加者:149名
講演内容:

(1) 機械工作の基礎
(機械工学専攻 准教授 藤原 順介)
- 機械加工(切削加工、研削加工)について
- 工作機械(旋盤、フライス盤、ボール盤、研削盤)
- 2次元切削(形削盤等)、3次元切削(旋盤切削)
- 切削状態(ドリルによる切削、フライスによる切削、砥粒による切削
- 切り屑形状(流れ形、せん断形、むしれ形、亀裂形)
- せん断変形と構成刃先
- 切削加工(切削速度、切削抵抗)
- 仕上げ面粗さ(理論仕上げ面粗さ)
- フライス切削
- 工具材料(工具材料の硬度と靭性)
(2) 工作機械を安全に使うために
(技術部 技術専門職員 林野 正)

- 事故原因について
a. うっかりミス b. 不慣れ c. 体調不良 d. 設備の不備 - 事故防止について
a. 機械を知る b. 操作方法の習得 c. 危険予知 d. 体調管理 e. 環境整備 - 労働安全衛生法の目的について
a. 職場における労働者の安全と健康を確保すること
b. 快適な職場環境の形成を促進すること - 労働安全衛生法に基づく機械関連資格について(免許、技能講習、特別教育等必要)
a. プレス機械 b. 研削砥石 c. 溶接 d. フォークリフト e. 玉掛け f. クレーン - 工学研究科(教育・研究)の特徴について
a. 不慣れ b. 安全意識の不足 c. 必要に迫られ - 旋盤の加工原理について
- 旋盤加工の準備と注意点
- 機械工作作業に適した服装
- 旋盤加工の危険予知
- 旋盤加工例の紹介
- 立フライス盤の加工原理
- フライス盤の工具
- 加工材料の取付方法
- フライス盤加工の注意点
- フライス盤加工例の紹介
- ボール盤の加工原理について
- ボール盤加工の危険予知と対策
- ボール盤の加工例の紹介
- コンターマシン(帯鋸)の取扱について
- 高速切断機の切断温度について
- グラインダー作業について
(3) まとめ
工作機械を安全に使うために、技術職員の目線から工学研究科で使用頻度の高い工作機械設備について、スライドを中心に具体的に加工例を示し説明をしました。これらの工作機械は汎用機と呼ばれ、セフティロック機能が充分でなく、ちょっとした油断やミスが大きな事故に繋がります。使用者本人が自身の身体を守らなければならない構造です。よって、この安全講習会で工作機械の基本・特性・操作方法等の予備知識を備え、危険予知能力を高め、事故を未然に防ぐ能力を養っていただきたく思います。

3. 機械工作安全講習会講習2(実演)
日 時:2008年6月18日(水)14:00~15:30
2008年6月19日(木)14:00~15:30
2008年6月20日(金)14:00~15:30
場 所:工学研究科 工作センター・学生実習工場
参加者:74名
実演内容:
(1) 工作機械全般の注意事項説明
(2) 旋盤の実演内容
- 旋盤(材料取付、刃物取付方法と注意点)
講師が加工準備のバイトの取付方法や操作方法の説明、実際の加工を通して危険防止のための注意点について説明し、受講生は加工実演を受講することで機械加工に於ける危険について学習し事故防止に役立てる。 - 加工例(円筒削り、穴あけ加工、ねじ切り加工、塩ビパイプ)
片刃バイトによる、アルミ丸棒の円筒削り、外径ネジ切り加工、円板のドリルによる穴あけ加工の後に内径バイトによる内径加工等の実演

(3) 立フライス盤の実演内容
- フライス盤の構造と操作方法
- 講師による各部名称と操作方法や注意点の説明
- 刃物の取付方法と注意点
- 材料固定の方法と注意点
- アルミ板の平面加工
- アルミ板の溝切り加工
- 割り出し盤による6分割穴あけ

(4) ボール盤の実演内容
- アルミ材料の穴あけ
- 下穴加工の後のタップ加工
(5) グラインダーの実演内容
- 鉄材研削と使用時の注意点説明
- ドリルの刃先研磨加工
(6) 帯鋸加工の実演
アルミ材料の切断と使用時の説明(保護メガネの着用、切断の最終段階で力をセーブし、あて板等の配慮が必要)
(7) まとめ

実演による加工と操作方法の説明や安全のための注意点、加工現場を体験することで、工作機械の動力の大きさや構造、加工原理、操作方法、安全に対する認識を深め、文献や映像にない体験を通し今後の研究活動に活かしていただきたく思います。
4. 機械工作安全講習会講習3(実技指導)
日 時:2008年7月16日(水)9:30~12:30 13:30~16:30
2008年7月17日(木)9:30~12:30 13:30~16:30
2008年7月18日(金)9:30~12:30 13:30~16:30
場 所:工学研究科 工作センター・学生実習工場
参加者:26名
(1) 実技指導の内容

- 製作課題(文鎮製作) 講師が参加者全員に対しマンツーマンで指導し、3時間を目標に製作課題を作製した。
- 旋盤の加工内容(真鍮丸棒20mm径、外径加工、穴あけ加工、タップ加工、ダイス加工、ローレット加工)
- フライス盤加工内容(丸棒底面の平面加工、つまみ部の座面加工、タップ下穴加工)
- ボール盤加工内容(ボール盤軸利用のタップ加工、下穴加工)
(2) まとめ
実技指導では初めて工作機械に触れる受講生が多く、課題作製の中で安全についての認識と、ものづくりの楽しさを感じたことだと思います。
講師も限られた時間内で製作指導することの難しさを痛感いたしました。
受講生全員が、講師の指導助言、手ほどき等で事故無く課題完成まで終了できました。
講習で得られた工作機械の操作方法及び安全に対する知識等を、今後の研究活動に役立てていただきたいと思います。
最後に
各講習終了後に実施したアンケート結果から、「各講習の受講者属性構成比」、「安全に対する理解」、「課題(文鎮)製作の感想」を掲載いたします。


